並木塔子 ── 2016年、文学の香りを纏って僕たちの前に現れた、哀愁と情熱のミューズ
2016年。まだ世界がどこか穏やかな時間の流れを残し、人々がスマートフォンの画面の向こうにそれぞれの夢や孤独を求めていたあの頃。ビデオショップの棚の、とりわけ洗練された大人の世界を描く空間のなかで、まるで一本の哀愁漂う名作映画のような、圧倒的な気品と情感を放つ一人の女性が現れました。並木塔子。その名前の響きをそっとなぞるたび、私の胸には、雨に濡れた初秋の街並みや、静まり返った書斎の窓辺に差し込む柔らかな光のような、あまりにも瑞々しくて切ない憧憬の記憶が蘇ります。