初川みなみ──僕たちの、隣にいたかもしれない「あの子」の、秘密の物語

誰の記憶の中にも、きっと、いるはずだ。 教室の隅で、いつも静かに本を読んでいた、あの女の子。 派手さはないけれど、時折見せる、はにかんだような笑顔が、どうしようもなく、心に残っている、あの子。

「初川みなみ」

彼女は、そんな、僕たちの、淡い記憶の片隅にいる「あの子」が、そのまま、画面の中に現れたかのような、奇跡の存在だった。

彼女の武器は、完璧な美貌や、圧倒的なスタイルではなかった。 むしろ、その逆。 少し地味で、どこにでもいそうで、そして、どこにもいない、その、あまりにもリアルな「普通っぽさ」。 それこそが、彼女が、僕たちの心を、どうしようもなく掴んで離さなかった、唯一無二の魅力だったのだ。

彼女の作品に触れることは、まるで、ずっと隣で過ごしてきた、あの「普通」の女の子の、決して知るはずのなかった、秘密の日記を、こっそりと覗き見てしまうような、体験だ。

あの、いつもはにかんでいた、あの子が。 あの、いつもおとなしかった、あの子が。 僕の前でだけ、その硬い蕾を、ゆっくりと、そして、激しく、開かせていく。 その、あまりにも無防備で、あまりにも正直な姿。

私たちは、その姿に、強烈な罪悪感と、同時に、どうしようもないほどの優越感を、覚えるのだ。 クラスの誰にも見せたことのない、彼女の本当の顔を、僕だけが知っている。 その、あまりにも甘美で、あまりにも残酷な、全能感。

だからこそ、2019年、彼女が忽然と姿を消した時の、あの喪失感は、計り知れないものがあった。 僕たちの、隣にいたはずの、あの子が、遠くへ行ってしまった。 もう、二度と、会うことはできないのだと、誰もが、そう思っていた。

──そして、奇跡は、起きた。 あの子が、帰ってきたのだ。 その報を聞いた時の、心の震えを、どう表現すればいいのだろう。 まるで、叶うはずのなかった恋が、数年の時を経て、再び、目の前で始まったかのような、そんな、ありえないほどの幸福感。

初川みなみ。 彼女は、AV女優という枠を超えた、僕たちの「青春」そのものだ。 派手な女の子ばかりに目を奪われていた、あの頃の僕たちが、本当は見過ごしてしまっていた、最も大切で、最も愛おしい、宝物。

おかえり。僕たちの、隣にいた、あの子。 もう、どこへも、行かないでほしい。