その日、業界が、そして私たちの時間が、確かに止まった。 2022年、圧倒的な存在としてシーンの頂点に君臨していた女王、「楓カレン」が、忽然と姿を消した。 あまりにも突然で、あまりにも静かな、そのあまりにも完璧な引き際。私たちは、その喪失感を埋める言葉すら見つけられなかった。

その透明感は、確かに「あの坂道」の系譜だった。 日本中の誰もが焦がれた、清らかで、儚げで、手の届かない存在。選ばれた少女たちだけが立つことを許される、あの聖域。 「富田優衣」 彼女が、その場所の出身だと知った時、私たちは、まるで失われた物語の続きを、禁断の書物の中に見つけてしまったかのような、甘美な衝撃に襲われた。

2003年。 まだどこか世紀末の余韻を引きずりながら、新しい時代へと向かっていた、あの少しぼんやりとした空気。そんな僕たちの退屈な日常に、彼女はまるで、一筋の閃光のように突き刺さってきた。 「青木玲」。その名前と、あまりにも鮮烈な「ショートカット」の残像。

それは、事件だった。 私たちの記憶の中で、キラキラとした衣装をまとい、無数の観客の歓声を浴びていたはずの少女。恋愛禁止という厳しい掟の中で、純潔の象徴として輝いていた、あの「国民的トップアイドル」。 彼女が、「藤かんな」として、私たちの前に再び姿を現した。あまりにも衝撃的な、あまりにも官能的な姿で。