北原ちあき ── 日活ロマンポルノから迷い込んだ「本物」の気品。昭和60年のミューズはあまりにも美しかった
1984年。 アダルトビデオというメディアが、まだ「裏街道」をひっそりと歩いていた時代。 そこに、眩しいほどのスポットライトを浴びた一人の女優が現れた。 北原ちあき。 彼女の登場は、当時のAV業界にとって、ある種の「事件」だったと言ってもいいだろう。 なぜなら、彼女は単なる新人ではなく、テレビ番組の司会やドラマ出演もこなす、正真正銘の「芸能界の住人」だったからだ。 日活ロマンポルノで主演を張り、スクリーンの中で輝いていた彼女が、なぜビデオの世界に降りてきたのか。 その謎めいた背景すらも、彼女の魅力を増幅させるスパイスになっていた。
彼女の最大の魅力。それは、育ちの良さを隠しきれない「深窓の令嬢」のようなオーラと、その清楚な仮面の下に隠された「大胆な裸体」のギャップだ。
文教大学女子短期大学部卒業という経歴、そして趣味はスケートや水上スキー。 プロフィールに並ぶ言葉の端々から、昭和のお嬢様特有の「余裕」と「品格」が漂ってくる。 158cmの華奢な身体、整った顔立ち、そして知性を感じさせる瞳。 画面の中の彼女は、決して猥雑な空気に染まることはなかった。 『セックス・メイド』や『愛人宣言』といったタイトルが踊る中でさえ、彼女だけはどこか涼しげで、汚されることのない聖域のように見えたのだ。 しかし、その一方で、空手二段という意外な一面も持っていたという。 その芯の強さが、カメラの前で臆することなく大胆に振る舞える度胸に繋がっていたのかもしれない。
活動期間は、1980年代中盤の数年間。 短い期間ではあったが、彼女が残したインパクトは絶大だった。 特に、彼女が見せた「恥じらい」と「受容」の表情は、当時の男性たちの庇護欲を強烈に刺激した。 高貴な女性が、自分の目の前で無防備な姿を晒してくれる。 その背徳的な喜びを、僕たちは彼女を通して知ったのだ。
北原ちあき。 彼女は、昭和という時代の黄昏時に咲いた、一輪の白百合だ。 ロマンポルノとAVの狭間で揺れ動いたその美しい姿は、今も僕たちの記憶の中で、色褪せることのない「憧れ」として大切にしまわれている。 時代が変わっても、彼女のような「本物の気品」を持つ女優には、そう簡単に出会えるものではない。

