高比良いおり ── 寂しがり屋のウサギが、夜の森で見せたひとときの夢
2021年6月。 大人の女性の美しさを追求する「マドンナ」から、少し不思議で、守ってあげたくなるような一人の女性が現れた。 「高比良いおり」。 その名前は、彼女がこれから見せてくれる物語の序章に過ぎなかったのかもしれない。 彼女がまとっていたのは、成熟した大人の色気というよりは、どこか放っておけない「隙(すき)」と、触れれば温かい「体温」だった。
彼女の魅力を語る上で、デビュー時の強烈なキャッチコピー「365日が、発情期。動物界で最も性欲が強いウサギ人妻」を避けて通ることはできない。 しかし、実際に彼女の瞳を見た僕たちが感じたのは、獣のような激しさだけではない。 「寂しいと死んでしまう」という俗説を持つウサギのように、誰かに愛されたい、誰かに触れていてほしいという、切実な「渇望」だった。
30歳という年齢でマドンナからデビューした彼女。 159cmの身体、優しげな顔立ち、そして包み込むようなDカップの柔肌。 彼女の最大の武器は、その「癒やし」のオーラだ。 画面の中の彼女は、僕たちが日々の生活ですり減らした心を、ただ静かに受け止めてくれる。 激しい情事の最中でさえ、彼女の表情には相手を慈しむような母性が滲み出ていた。
シングルマザーという設定(作品上の役柄としての演出も含め)や、訳ありの過去を背負った役柄。 それらが彼女の「薄幸美人」としての魅力をより一層際立たせていた。 ただ快楽に溺れるだけではない。 その行為の奥に、誰かと繋がっていたいという孤独な魂の叫びが聞こえてくるようで、僕たちは胸を締め付けられた。
彼女が「高比良いおり」として活動した期間は、決して長くはなかった。 その後、「鈴宮かなこ」として新たな道を歩み始めた彼女だが、あの2021年の初夏にマドンナで見せた「高比良いおり」という存在は、まるで夜の森にふと現れた幻のウサギのように、僕たちの記憶の中で特別な輝きを放っている。
高比良いおり。 彼女は、僕たちの孤独に寄り添ってくれた、美しくも儚い「人妻」の記憶だ。 あの温もりと、少し寂しげな笑顔。 彼女が教えてくれた、「求め合うこと」の切なさと愛おしさを、僕たちは忘れないだろう。

