愛弓りょう──あの日の空港の、美しすぎた「あの人」の、秘密のフライト
旅立ちの喧騒に満ちた、空港のゲート。 背筋を伸ばし、完璧な微笑みで、無数の旅人たちを導いていく、航空会社の地上職員。 その姿は、凛として、知的で、決して手の届くことのない、憧れの象徴だった。
「愛弓りょう」
彼女が、その「元大手航空会社の地上職員」という経歴を背負って私たちの前に現れた時、私たちは、あの日の空港で一瞬だけ目を奪われた、名も知らぬ「あの人」の、その後の物語を、禁断の形で知ってしまったかのような、めまいを覚えた。
彼女の魅力は、その身体に染み付いた、隠しようのない「気品」にある。 常に微笑みを絶やさず、どんな時でも丁寧な物腰。その、徹底的に教育されたプロフェッショナルとしての姿と、今、私たちの前で見せる、無防備で、官能的な姿との、あまりにも激しいギャップ。 その落差に、私たちの心は、激しい乱気流に巻き込まれたかのように、揺さぶられるのだ。
彼女の作品に触れることは、まるで、自分一人のためだけに用意された、秘密のファーストクラスに搭乗するような体験だ。 あの完璧な笑顔が、自分のためだけに崩されていく。 あの丁寧な言葉遣いが、自分のためだけに乱れていく。 その、あまりにも贅沢で、あまりにも背徳的な「特別扱い」に、私たちは、抗うことのできない優越感と興奮を覚えてしまう。
大勢の乗客の一人でしかなかったはずの自分が、彼女の人生というフライトの、たった一人の乗客になる。 これは、そんな甘美な夢を見せてくれる、大人のための、おとぎ話なのかもしれない。
愛弓りょう。 彼女は、安定した滑走路から、自らの意志で、まだ誰も見たことのない、未知の空へと飛び立ったのだ。 そのフライトの行き着く先を、私たちは知らない。 ただ、その勇気ある旅路の、唯一の同乗者として、彼女がこれから見せてくれるであろう、すべての美しい景色を、この目に焼き付けていきたいと、切に願う。

