七瀬アリス──一度だけ会って、二度と会えないと諦めていた、僕たちの「妖精」

その存在は、まるで、儚い夢のようだった。 2010年代、私たちの前に現れた「七瀬アリス」は、AV女優というよりも、物語の中から抜け出してきた「妖精」と呼ぶのが、きっと正しかった。

148cmという、あまりにも小さな身体。 壊れてしまいそうなほど、華奢な手足。 そして、世の中のすべてを、まだ知らないかのような、無垢な瞳。 彼女は、男たちの心の最も深い場所にある「庇護欲」という名の、聖域に、いとも簡単に、そして静かに、舞い降りたのだ。

彼女を見ていると、私たちは、どうしようもない罪悪感と、同時に、抗うことのできない独占欲に、心を焼かれた。 この、あまりにも純粋で、あまりにも小さな存在を、守ってあげたい。いや、自分の腕の中にだけ、閉じ込めてしまいたい。その、矛盾した感情の渦の中で、私たちは、ただただ、彼女に溺れていった。

彼女は、私たちの「禁断の妹」であり、「永遠の少女」の象徴だった。

しかし、妖精は、いつか、森に帰ってしまうものだ。 人気が絶頂にあった2017年、彼女は、まるで最初から存在しなかったかのように、私たちの前から、忽然と姿を消した。 もう、二度と会えない。 その喪失感は、あまりにも大きく、彼女は、私たちの心の中で、手の届かない、切ない思い出へと、姿を変えていった。

──そして、5年という、あまりにも長い月日が流れた。

奇跡は、本当に起こるのだと、あの時、私たちは知った。 妖精が、帰ってきたのだ。 諦めていたはずの夢の続きが、再び、私たちの目の前で始まった。 信じられない、という思いと共に、涙が溢れたのを、今でも覚えている。

久しぶりに会った彼女は、少しだけ大人びていたかもしれない。けれど、その瞳の奥に宿る、あの頃と変わらない、無垢な光。 その変わらなさに、私たちは、どれほど救われただろうか。

七瀬アリス。 彼女は、私たちの失われた青春の、忘れ物だ。 一度は諦めたはずの、あの淡い恋の記憶を、もう一度、私たちに思い出させてくれるために、彼女は、再び、舞い降りてくれたのかもしれない。

おかえり、僕たちの妖精。 今度こそ、もう、どこへも行かないでほしい。そう願うのは、きっと、我儘なのだろう。