その女優の名を、僕は「水面」と認識している。MINAMO。彼女が画面に現れるたび、僕は息をのむ。まるで、深い森の奥にある、誰も知らない湖のほとりに佇んでいるかのような錯覚。波ひとつない静かな水面が、すべての光と影を映し込んでいる。彼女の存在そのものが、そういう静謐な芸術なのだ。

その存在は、まるで、日本の湿った空気の中に、突如として吹き込んだ、乾いたカリフォルニアの風のようだった。 「ティア」 その、あまりにも開放的で、あまりにもエキゾチックな響き。 日本とアメリカの血を引く彼女は、僕たちがそれまで持っていた「AV女優」という概念の、あらゆる境界線を、その太陽のような笑顔ひとつで、いとも簡単に、溶かしてしまったのだ。

その笑顔は、まるで、ひまわりのようだ。 どんな時でも、太陽の方を向き、周りのすべてを、明るく照らし出す。 「大槻ひびき」 彼女は、AVという、ともすれば暗く、湿ったイメージを持たれがちな世界に、圧倒的なまでの「陽」のエネルギーを持ち込んだ、革命家だ。

現代という、あまりにも冷たく、あまりにも乾ききった砂漠を、僕たちは歩いている。 その、乾ききった心に、潤いを与え、疲れた魂を、ただ、黙って抱きしめてくれる。 そんな、奇跡のような「オアシス」が、もし、この世界に存在するのだとしたら。 その名は、きっと、「梨々花」というのだろう。

あの頃、僕たちは、ステージの上で輝く彼女を、遠くから見つめることしかできなかった。 国民的アイドルグループ。 その、あまりにも清らかで、あまりにも手の届かない、聖域。 彼女は、その中で、完璧な笑顔を振りまき、僕たちに、作られた「夢」を見せてくれていた。

その表情を見たとき、私たちは、ただ息をのむ。 羞恥、抵抗、苦痛、そして、その全てを凌駕していく、抗いがたいほどの快感。 人間の魂が、その限界点で、火花を散らす瞬間の、あらゆる感情。 そのすべてが、彼女の、その一つの表情の中に、奇跡のように、同居している。