1997年という年が幕を開けたばかりの、あの少しけだるくも華やかなお正月の空気を、私は今でも昨日のことのように思い出します。こたつに入りながら何気なく眺めていたテレビの特番、いわゆる「27時間テレビ」の画面のなかで、私の視線は突如としてひとりの女性に釘付けになりました。それが、のちにAV女優として忘れがたい軌跡を残すことになる、舞島美織さんとの出会いでした。
番組の企画であった『見えたら負けよ 射撃大会』。安岡力也さん率いる力也組の鮎川はるなさんと対峙する、峰岸徹さん率いる峰岸組の代表として、彼女はそこに立っていました。ブラジャーを外し、ショーツ一枚の身体にトイレットペーパーを巻きつけただけの無防備な姿。芸能人たちが放つ水鉄砲の水しぶきを浴びて、白い紙が少しずつ溶け落ち、ついにその胸元が露わになった瞬間、スタジオ中から湧き上がったどよめきは今でも耳の奥に残っています。
驚いたのは、テレビの前の私たちや男性出演者たちだけではありませんでした。むしろスタジオにいた女性陣のほうから、ため息にも似た称賛と羨望の歓声が上がったのです。身長156センチという小柄な身体に秘められた、バスト90センチの豊満かつ一点の曇りもない美乳。いやらしさを微塵も感じさせない、まるで芸術品のようなその胸の造形は、お正月の深夜のお茶の間を一瞬にして幸福な熱狂へと包み込みました。あのとき、水しぶきのなかで少し照れくさそうに、けれど堂々と微笑んでいた彼女の姿は、まさに90年代のテレビが持っていた奇跡のような一瞬だったと思います。
それから数ヶ月が過ぎた1997年5月27日。あの夜の衝撃を胸に秘め続けていた私たちの前に、彼女はついにシャイ企画の『シルエットキッス 4』でAV女優として降り立ちました。パッケージを手に取ったときの、あの心臓が早鐘を打つような高揚感をどう表現すればいいでしょうか。
1978年2月3日生まれ、東京都出身。デビュー前は日本料理店で働いていたという彼女の素顔を思うと、私はたまらない愛おしさを覚えました。和食の店で静かに立ち働いていたであろう清楚な少女が、14歳のときに1歳上の先輩と初めての経験を済ませていたという少し早熟な秘密を抱え、そして今、カメラの前で一糸まとわぬ姿になろうとしている。しかも、彼女が記念すべきデビュー作で最初に肌を重ねた相手は、名優・山本竜二さんでした。百戦錬磨のベテラン男優の胸に飛び込み、まだ19歳になったばかりの彼女が少しずつ女としての表情を解き放っていく過程は、見る者の胸を締め付けるほどに瑞々しく、そして切ないほどに美しいものでした。
彼女の活動期間は、驚くほど短いものでした。1997年の5月にデビューしてから、同年11月に宇宙企画のオムニバス『SEXY倶楽部 ’97 第2巻』に名を連ねるまでの、わずか半年あまり。まさに、夏の始まりとともに現れ、木枯らしが吹く頃には去っていった幻のような存在でした。
しかし、その短い季節のなかで彼女が残した作品の輝きは、どれもこれも一級品ばかりでした。デビュー翌月の6月には名門アトラス21から『ヴィンテージヒロイン』をリリースし、7月には同メーカーの看板シリーズである『NEO出血大制服 33』に出演。制服のブラウスがはち切れんばかりの胸のラインと、引き締まった58センチのウエストのコントラストは、制服美少女というジャンルのひとつの到達点を見るかのようでした。
そして8月末、再びシャイ企画から届けられた『私を感じて!!』。晩夏の熱気をそのまま閉じ込めたようなこの作品を経て、秋にはアイビックから『美乳 家庭教師』『美乳新妻』と、彼女の最大の魅力であるその美しい胸を前面に押し出したドラマ作品が立て続けにリリースされました。家庭教師や新妻といった少し背伸びをした役柄を演じても、彼女からにじみ出るどこか素朴で温かみのある人柄は隠しようがなく、「もしこんな人がすぐそばにいてくれたら」という甘い夢想を、私たちは飽きることなく繰り返したものです。
1997年という一年間だけを全力で駆け抜け、彼女は静かに私たちの前から姿を消しました。その後、2002年にデジタル写真集『大人の絵本』が出たり、2000年代に入ってから数々の総集編DVDに彼女の映像が再録されたりするたびに、私はあの頃の自分の部屋の匂いや、ビデオデッキの駆動音を思い出さずにはいられませんでした。2009年6月に、XCITYの「シャイニングメモリーズ」という企画で懐かしの女優として彼女が再び取り上げられたときも、やっぱりみんな彼女のことを忘れられずにいたのだと、同志を見つけたような温かい気持ちになったのを覚えています。
同性からさえも感嘆の声が漏れた、あの1997年のお正月の奇跡。そして、そこから始まった半年間の短い夢。舞島美織という女優は、まるで打ち上げ花火のように一瞬で夜空を染め上げ、消えたあとの暗闇にいつまでも消えない残像を残していきました。目を閉じれば今でも、水鉄砲のしぶきの向こう側で微笑む彼女と、『シルエットキッス』のなかで恥じらいながら唇を重ねる19歳の彼女が、私の記憶のなかでいつまでも眩しく重なり合っています。

