1990年代の半ば、レンタルビデオ店の棚に並んでいたKUKIのパッケージには、いつもどこか切なくて、それでいて不思議な華やかさがあった。数多くの美少女たちが一瞬の火花のように散っていくあの時代にあって、1996年の夏にひっそりと現れ、そこから2005年までの約10年間という長い時間を、途切れ途切れに、しかし確実に生き抜いた女優がいる。「森本みう」という名前を思い浮かべるとき、私の胸に広がるのは、一人の少女が大人の女性へと移ろいゆく歳月の重みと、言葉にできないほどの愛おしさだ。
彼女が私たちの前に初めて姿を現したのは、1996年8月30日にKUKIから発売されたデビュー作『ヴァージンペット』だった。1977年9月20日生まれ、神奈川県出身のAB型。デビュー当時の彼女は、19歳の誕生日を目前に控えたばかりの、ほんのりと幼さを残す少女だった。身長152センチという、抱きしめればすっぽりと腕の中に収まってしまいそうな小柄な体躯に、Bカップの控えめな胸元。その華奢なシルエットは、当時の王道だったグラマラスな女優たちとは一線を画す、守ってあげたくなるような頼りなさを湛えていた。
初期のKUKI専属時代、彼女が紡ぎ出した作品群は、今振り返っても胸が締め付けられるほどノスタルジックな響きを持っている。9月の『森本のおもちゃ箱』、11月の『ただ今、修行中』、そして12月の『ひとりぼっち・東京』。『ひとりぼっち・東京』というタイトルが象徴するように、画面の中の彼女には、都会の片隅で小さな膝を抱えているような、どこか寂しげで透明な空気感が漂っていた。翌1997年2月の『もりもとエキス』に至るまで、カメラの前で少しずつ心と身体を開いていく彼女の姿は、作られたアイドルの笑顔ではなく、等身大の少女が持つ微熱そのものだったように思う。
しかし、彼女の物語はそこでは終わらなかった。KUKIという揺りかごを出た1997年の夏以降、彼女はミス・クリスティーヌの『ナースの花ビラ 舐め愛レズ』や宇宙企画の『NEWナース倶楽部Vol.2』で新たな一面を見せたかと思えば、1998年9月にはアタッカーズの衝撃作『女子校生監禁凌辱 鬼畜輪姦13』へと身を投じる。あの小柄で無垢だった少女が、過酷な凌辱の嵐の中で必死に息づく姿は、当時の私に強い衝撃と、目を背けられないほどの倒錯的な感動を与えた。
1999年にはオリジナルビデオ『実録性犯罪ファイル 都会の禁猟区』に出演し、2000年にはアタッカーズの『龍縛愛玩調教8 レズビアン』やトライハートの『潮噴き倶楽部』に顔を出す。年に数本というペースになりながらも、彼女は決してこの世界から完全に消えてしまうことはなかった。忘れた頃にふと新しい作品のクレジットに彼女の名前を見つけるたび、遠く離れた場所で生きる昔の恋人の消息を聞くような、安堵と切なさが入り混じった感情を覚えたものだ。
そして、数年の空白を経た2004年の春、彼女は再び本格的な活動の場へと舞い戻ってくる。1977年生まれの彼女は、このときすでに20代の後半に差し掛かっていた。ドリームチケットの『超過激的★パイパン』や『団地妻[妄想しまくり若奥さま]』、アウダースジャパンの『レズビアンストーリー17 重宝』、さらにはSODクリエイトやディープス、隼エージェンシーといった2000年代を象徴するメーカーの作品群に、彼女は次々とその身を捧げていった。
かつて152センチの身体で『ヴァージンペット』として震えていた少女は、いつしか「若奥さま」や「人妻」、そして2005年には熟女メーカーであるマドンナの『熟女拘束イカせまくり地獄』や『熟・癒され保育園 2』『熟露出 2』といった作品の中で、成熟した女としての色香を振りまくようになっていた。同じ年の夏にMOODYZから発売された『パイパンエンジェルDX 3 フルデジタルモザイク』のように、その小柄な体型を活かして少女のようなフェティシズムを求められる一方で、マドンナでは『犯されたセールスレディ 3』のような大人の女性としての悲哀とエロティシズムを演じ切る。その振り幅の大きさこそが、森本みうという女優の底知れない魅力だったのだろう。
1996年のVHS全盛期から、2005年のフルデジタルモザイクが当たり前になったDVDの時代まで。移り変わりの激しいこの業界で、10年もの歳月を跨いでカメラの前に立ち続けることが、どれほど孤独で、どれほど覚悟のいることだったか。
最後の作品となった2005年12月の『犯されたセールスレディ 3』を見届けたとき、私の中にあったのは、長い旅路を共に歩み終えたような静かな感慨だった。あどけない少女の季節から、過酷な試練の季節、そして妖艶に咲き誇った大人の季節まで。森本みうというひとりの女性が、その小さな身体で画面の向こう側に刻みつけた10年間の体温は、今も私の記憶の中で、あの頃の東京の夜景のように、少し寂しく、けれど誰よりも美しく瞬き続けている。

