90年代後半の書店の片隅で、少し背徳的なときめきを抱えながら手に取った、いわゆる「お菓子系雑誌」のページ。パステルカラーの背景や陽だまりのようなセットのなかで、水着や下着姿になって無邪気に微笑んでいた少女たちの姿を思い出すとき、私の胸の奥から決まってせり上がってくるひとつの名前があります。1997年から1998年にかけて、まるで純白のレースが少しずつ深い夜の闇に染め上げられていくかのような軌跡を描いた女優、真咲麻衣さんです。
1978年2月15日生まれ、神奈川県出身。身長155センチという小柄で愛らしい体躯に、83・56・83という、どこから見ても過不足のない均整のとれたスレンダーなライン。私たちが最初に彼女と出会ったのは、1997年頃の雑誌『クリーム』をはじめとするお菓子系グラビアの誌面でした。時には「真崎麻衣」という表記で掲載されることもあった当時の彼女は、まさに「清楚」という言葉をそのまま形にしたような美少女でした。少し控えめな微笑みと、どこか育ちの良さを感じさせる澄んだ瞳。まだヌードになる前の、水着やランジェリーという薄い布地一枚に守られた彼女の姿は、当時の私たちの淡い憧憬そのものだったように思います。
そんな彼女が、少しずつそのヴェールを脱ぎ捨ててヌードグラビアへと進み、そして1997年7月26日、TANKからリリースされた『噂のお姉さん』でついにAVの世界へと足を踏み入れたときの衝撃は、今も鮮明に記憶に残っています。あの『クリーム』の誌面で微笑んでいた少女が、今、動画のなかで吐息を漏らしている。その事実だけで、ビデオデッキの再生ボタンを押す指先が微かに震えるほどの高揚感を覚えたものでした。
デビュー作では「お姉さん」という少し背伸びをしたタイトルが冠されていましたが、画面のなかの彼女はまだ19歳になったばかりの瑞々しさに溢れていました。しかし、真咲麻衣という女優が私たちの心に一生消えない楔を打ち込んだのは、そこからわずか数ヶ月のうちに彼女が辿った、あまりにも劇的で倒錯的な変貌の物語によってでした。
同年9月にギャングから発売された『コスチュームDOLL 私を汚して!』、そして大洋図書の『桃色の罪』。タイトルが少しずつ不穏で甘美な響きを帯びていくなか、1997年12月にぶんか社から出版された写真集『ナチュラリズム』は、まるで嵐の前の静けさのように、彼女の生まれ持った素肌のままの清楚な美しさを永遠に封じ込めた一冊となりました。
そして年が明けた1998年、彼女は後戻りのできない深い森へと足を踏み入れます。1月16日にリリースされた『写縛6 真咲麻衣』。この作品を皮切りに、あの清楚なお菓子系アイドルだった少女は、麻縄と緊縛の世界へとその身を投じていったのです。
続く2月には名門シネマジックの『放課後の天使たち9』に名を連ね、3月には同レーベルの『女校生緊縛授業 4』に出演。さらに決定打となったのは、緊縛界の巨匠・雪村春樹氏の手によるサンセットカラーの作品、『雪村春樹MANIAC Vol.7 上巻 柔肌の性癖』および『下巻 吊の煉獄』、そして『縄調教3 麻衣』でした。
なぜ、あれほどまでに清純で、陽だまりのなかの水着グラビアが似合っていた少女が、これほどまでに深く暗い緊縛の世界へと惹き込まれていったのか。当時の私は、画面のなかで無慈悲な麻縄に食い込まれ、天井から吊り下げられて苦悶の表情を浮かべる彼女の姿を見つめながら、胸が張り裂けそうなほどの切なさと、同時に抗いがたいほどの激しい興奮に襲われていました。
ソフトなSMから本格的な吊りの世界に至るまで、彼女の清楚なルックスは、縄という異物と交わることで驚くほどの化学反応を起こしていました。もし彼女が最初から妖艶で退廃的な雰囲気を持つ女優だったなら、これほどの感動は生まれなかったはずです。かつて『クリーム』の誌面で見たあの無垢な微笑みの記憶がこちらの脳裏に残っているからこそ、56センチの細いウエストに縄が食い込み、白い柔肌が紅潮していく様のコントラストが、涙が出るほど美しく、そして残酷に映ったのです。
1998年9月4日にシネマジックから同日発売された『雪村春樹SM大全 女校生愛奴図鑑』と『屈辱の花嫁たち2』などのオムニバス作品を最後に、彼女の時計の針は静かに止まりました。1997年から1998年という、わずか二年にも満たない短い活動期間でした。
お菓子系アイドルの甘い夢から始まり、写真集『ナチュラリズム』で素顔の輝きを見せ、そして最後は雪村春樹氏の縄のなかで燃え尽きるようにして姿を消した真咲麻衣さん。彼女があの時代に残した軌跡は、少女の純潔が倒錯の美学へと昇華されていく、ひとつの完璧な芸術作品のようでもありました。今でもふと当時の映像やグラビアを見返すと、麻縄の陰影の向こう側から、あの頃と少しも変わらない彼女の澄んだ瞳がこちらを見つめているような気がして、胸の奥が甘く疼くのを止められないのです。

